MLBの読み物

MLB(メジャーリーグ)の少しマニアックな情報を発信するサイトです。

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MLB
関連の用語(特に移籍関連)の詳細な解説を作成してきました。一区切りとしてまとめのページを作成しました。このページに今まで作成した用語とそのリンクを貼っておきますので、それぞれのページにアクセスしてみてください。

 

10-and-5 Rightsの記事はこちら

25人ロースターの記事はこちら

40人ロースターの記事はこちら

DFA(Designate for Assignment)の記事はこちら

・アウトライト(アウトライト・ウェイバー)の記事はこちら

・リリース(リリース・ウェイバー)の記事はこちら

・サービスタイムの記事はこちら

FA(フリーエージェント)の記事はこちら

・年俸調停の記事はこちら

 

以上で特に難解な用語については理解できるかなと考えています。この用語についてもページを作成して欲しい等依頼がありましたらTwitterDMからご連絡ください。

 

 

Photo BY

Keith Allison

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近年MLBではプロ経験がないコーチや大学野球のコーチがMLBのチームになる事例も増えてきています。そんな傾向の裏にある現代のMLBのコーチに求められる能力は何かを解説した記事を今回は紹介したいと思います。

 

それは2018517日にSPORTTECHIEに掲載された「Throw BP, Know SQL: The Modern Baseball Coach’s Job Description」という記事です。概要を伝えるために省略している部分も多いので、是非元の記事もお読みください。

 

サム・フォルドは8年間MLBでプレイして昨年の秋に引退した。彼はその後フィリーズに新たに創設された役割であるメジャーリーグ選手情報コーディネーターに就任した。

 

フォルドは球界でも屈指の高学歴な選手として知られている。スタンフォード大学で経済学の学士号を取得。その後メジャー昇格前は統計学の修士号を取得する為に、勉強に励んでいた。また彼は対戦相手の研究にも熱心に取り組んでいた。一般的な指標だけでなく、対戦相手の4シームのフライ/ゴロ等若干細かい数字にも精通していた。

 

このようなユニークな経歴のお陰で、彼は選手達に複雑なデータを共有するという仕事をするにはピッタリの存在になった。

 

彼が伝えたいメッセージはフィリーズの選手達に着実に浸透しつつある。例えば野手は、コーチが強調する一方で理解するのが難しいwRC+wOBAといった指標での成績を伸ばしつつある。また投手陣の中には自身の球種のレパートリーの中で、見落とされていた球種が実際にはとても効果的な球種であると知り驚いた選手もいる。

 

フォルドは野球のコーチの新たなタイプの1人で、その役割はデータ分析を選手達に上手く伝える事にある。2015年にStatcastが導入されて以降、フィールド上で起こる事に関してより多くのデータを収集する事が可能になった。今やデータは打順の組み方から選手の評価まで、全ての球団の意思決定を支配していると言える。しかしその知識が、必ずしも現場まで行き届いているわけではない。

 

(チーム編成を担う)フロントオフィスの人達は彼ら自身がデータを見るのにかなりの時間を割いているから、野球に関わる全ての人がデータを理解していると思い込んでいる。しかし選手達の多くは詳細なデータを自ら調べない限り、データについて大まかにしか理解していない。」とフォルドは語る。

 

私は3年前に球界関係者にアンケートを実施した。その結果、フロントオフィスのメンバーが扱う高度なデータのうち選手に届いている情報は非常に少ないということが判明した。パイレーツが情報共有には最も優れていて、データを重視する事で有名なアストロズやレイズも選手と上手く情報を共有出来ていた。

 

しかし現在2018年には、データの知識を持つコーチの役割が激増している。例えばレイズはメジャーリーグフィールドコーディネーターとしてロッコ・バルデリ(現ツインズ監督)を採用している。レイズでバルデリが担うような役職を担当するスタッフをドジャース、アストロズ、レッドソックス、パイレーツも採用している。

 

2016年にアストロズは、チーム傘下のマイナーのチームでプレイヤーデペロップメントを専門にするコーチの役職を設置して、Tommy KawamuraAaron DelGiudice を採用した。彼らに加えて、GMを務めるジェフ・ルーノーの右腕的存在であるシグ・メジャルらもマイナーリーグでの選手育成に関与している(メジャルは2018年オフにマイク・イライアスGMと共にオリオールズに移籍して、現在はGM補佐を務めている)

 

アストロズのジェフ・ルーノーGMによると、現在コーチを募集する際に条件として提示する特徴は次の2点である。

①打撃投手を務められること

SQLを理解していること(SQLとはデータベースを管理する為に使われるデータベース言語)

 

この2つのスキルを兼ね備えている人物は僅かしかいない。

 

アストロズにここ数年で新たに採用されたコーチの仕事は、ヒューストンにあるアストロズのフロントオフィスから生まれたイノベーションを取り入れ、マイナーリーグでも高度なデータを使いこなす環境を整備する事であった。アストロズ傘下のマイナーのチームが“実験室になり、さまざまなアイデアの有効性をテストし、MLBに到達する前に選手達とスタッフに複雑な概念を理解させるのを手助けしたとルーノーGMは語っている。

 

近年は大量のデータがあり、選手を圧倒させるほどである。実際にルーノーGMも得られる情報が過剰だと認めている。選手達に高度なデータを伝えるためのプロセスはフロントオフィス→コーチ→選手の3段階であり、これは基本的に今も昔も変わらない。しかし現在ではこのプロセスの中で、統計学に精通したコーチあるいは選手と直接関わるアナリストの存在感が増しつつある。

 

特にその最新のデータによって今まで正しいと考えて実行してきた事を改める必要がある場合には、選手は最新のデータを伝える人物を信用する必要がある。だからこそ多くの球団は選手と信頼関係を築いているコーチ達にその役割を任せてきた。しかし記事の初めに見てきたフィリーズやアストロズ、パイレーツはそれと異なり、選手とアナリストを、コーチを介さずに直接繋げようとしているのである。選手達から何か質問が出れば、アナリスト達が直接にその疑問を解決するのだ。

 

ナショナルズのデイビー・マルティネス監督は「可能な限りすべての情報を使用している。また選手に提供する情報の量は各人で分けている。多くの情報を欲しがる選手もいれば、それほど情報を求めない選手もいる。」と語る。

 

チームでクローザーを務めるショーン・ドゥーリトルは、彼が最も興味を持っているのはリリースポイントに関するデータだと発言している。シーズン序盤で好投を重ねた後に、彼はコーチにその試合の時のリリースポイントを基準にするように伝えた。現在の彼は自身のリリースポイントが基準から外れていた場合に限って、データをチェックするようにしている。

 

「データからのフィードバックは気に入っているよ。マウンドで感じた事とデータが一致するかを確認したいと思って使っている。」とドゥーリトルはコメントしている。

 

また対戦相手に関わらず、最も役に立つ事は定量的なデータを定性的なデータに変える事だともドゥーリトルはコメントしている。

 

例えば特定の打者がストライクゾーン外のボールをどれだけ空振りしたかのようなデータではなく、得点圏の時には積極的に打ちに行くというデータが役に立つという事である。

 

球界に入る前にはエンジニアやスタートアップ企業の幹部、経営コンサルタントとして働いていたルーノーは、球界で求められるコミュニケーションが他の業界と少し異なる事に気付いた。

 

「球界で働き始めて数年間のうちに、他の業界で求められるような事実とデータに基づく方法で周囲の人々を説得する従来の方法が重要ではないと悟りました。球界ではそれぞれの状況について話す必要があり、周囲の人間と密接に繋がる事が求められます。そして周囲の人達に自身の考えを納得してもらい、最終的にその考えを彼ら自身のものにしてもらう必要があるのです。」

 

またかつてアスレティックスでボブ・メルビン監督のもとでプレイしたドゥーリトルは、選手達がメルビンのもとでプレイする事を好きだった理由を「メルビンは選手とのコミュニケーションに長けていて、彼が下す決定の理由を分かりやすく伝えてくれるからだ。」と明かしている。

 

参考:Throw BP, Know SQL: The Modern Baseball Coach’s Job Description

Photo BY: WEBN-TV

 

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31日午前7時に、ジーナ・ルノーは4歳の息子ヘンリーと共にヒューストンの自宅の階段を下りた。 彼女が目覚めたとき夫のジェフは寝室にいなかったが、すぐにジーナとヘンリーはその理由を悟った。 ジェフ・ルーノーはアストロズのオフィスにいて、徹夜で同僚と共にトレード案を練っていたのだ。

 

アストロズのGMとして8年目を迎えるルーノーは時にその冷徹なやり方ゆえに批判を受けることもあったが、球界最弱のチームを2017年のワールドチャンピオンに変えてみせた。そんな彼はこの夏どこに行っても同じ話を聞いた。野球界で史上6チーム目の3年連続100勝を達成する勢いのチームで、球界最高の先発投手コンビのジャスティン・バーランダーとゲリット・コールがいるのに、アストロズは先発投手を獲得するべきだという話だ。そして実際その意見はルーノーにとっても正しい意見だった。

 

ルーノーが獲得したバーランダーとコールは、アストロズ移籍後の成績のほとんどのカテゴリーで1位と2位の座を争うほどの活躍を見せている。さらに昨年オフに加入したウェド・マイリーも、450万ドルの契約額を遥かに上回る価値を提供している。

 

しかしマイリーに続く先発4番手の投手がアストロズにはいなかった。地区優勝を達成するだけならば、新たな先発投手は必要ないとルーノーは考えていた。ルーノーが求めている投手は、最大7試合戦うプレーオフのシリーズで1試合か2試合に送り出せる存在を意味する。つまりマイリーと同じか彼以上の投手が欲しかったのだ。

 

アストロズのニーズに合致する先発投手の候補は少なく、さらにアストロズの獲得候補リストからはどんどん選手が消えていった。マーカス・ストローマンはメッツに移籍してしまい、ジャイアンツやメッツはマディソン・バムガーナーやザック・ウィーラーの放出案を引っ込めたとルーノーは感じ取っていた。

 

さらにアストロズはチームのプロスペクト上位3人であるヨーダン・アルバレス、フォレスト・ウィットリー、カイル・タッカーを放出する気が一切なかった。アストロズとトレードについて話し合う時に、この3人の事を問い合わせる事すらしないチームもいた。また数チームが問い合わせた場合も、アストロズはすぐにその問い合わせを拒否した。つまりアストロズにとって新たな先発投手を獲得するために支払える対価は、バーランダーやコールの時と同様にTOP3以下の選手に限定されていたのだ。

 

730日トレードデッドラインまで24時間に迫ったタイミングで、ルーノーはGM補佐(当時)のブランドン・トーブマンのオフィスで、その他数人と共にトレード案を練っていた。しかし大きな動きが起こる可能性は非常に低いと彼らは考えていた。そんな時だった。チームのオーナーであるジム・クレーンがトーブマンのオフィスに入ってきたのは。

 

「グレインキーはどうだ?」クレーンの言葉にルーノーらは驚いた。確かにアストロズの編成チームの全員にとって、グレインキーはお気に入りの存在だった。アストロズの内部データによると、チームを2019年にワールドチャンピオンに導く確率をグレインキーと同じくらい引き上げられる存在は他に1人しかいなかった。しかしグレインキーは球界屈指の高給取りであり、アストロズにグレインキーの契約を引き受ける余裕があるようには見えなかった。

 

「グレインキー獲得の交換相手が合理的なものならば、資金面の問題は解決できる。」とクレーンは笑いながら言った。

 

ルーノーはすぐにDバックスのマイク・ヘイゼンGMに電話をかけた。彼らは初夏にロビー・レイのトレードを話し合っていたが、話はそれほど盛り上がらずに終わっていた。今回のルーノーからのトレード案に対するヘイゼンの態度は明確だった。ヘイゼンは、Dバックスの長期プランに合致する見返りを出さない限りグレインキーを放出しないという意思を見せた。それどころか彼はアストロズに要求する4人のプロスペクトの名前をはっきりと提示してきた。Dバックスはその4選手を気に入っており、長年にわたって調査を続けていたのである。

 

アストロズは過去のデータに基づき選手の未来を予測しようと努めている。そんな彼らから見ても、グレインキーは35歳といえパフォーマンス面と健康面両方で素晴らしい選手だった。しかしヘイゼンの要求はあまりに高かった。ルーノーはヘイゼンとの電話を切った時、グレインキーが24時間後にアストロズの選手になっている可能性は10%ほどしかないと感じた。それでも彼は、ほとんど睡眠を取らずにこのトレードの可能性を探る事は意味があるとも感じていた。

 

ヘイゼンがいるフェニックスとルーノーがいるヒューストンは2時間時差がある。ルーノーは朝の早すぎる時間帯にヘイゼンに連絡を取りたくなかった。なぜならそんな時間に連絡すれば、ルーノーの必死さや焦りをヘイゼンに察知されるからだ。しかし結局ルーノーはトレードデッドラインの4時間ほど前にヘイゼンにトレード案を送った。アストロズからのオファーには、ヘイゼンが求めた4人の内コービン・マーティンとセス・ビアーが含まれていた。その2人とヘイゼンの要求より劣る選手を3番目のピースに加えて、グレインキーの残りの給料をDバックスの希望より負担するようにアストロズは求めた。

 

ヘイゼンの答えはノー。

 

その後給与面の問題はグレインキーの年俸の支払いを繰り延べする事を通じて、解決する事ができた。しかし問題は残されていた。ヘイゼンがグレインキーの見返りに要求しているプロスペクトを放出する事を、アストロズ側が納得できていないという事だ。

 

そしてルーノーはトレードデッドラインの1時間前に、最後にして最高のオファーをヘイゼンに提示した。編成チームのスタッフの中には心配する者もいたが、JB・ブカウスカスをグレインキーの見返りに加えたのだ。ブカウスカスはヘイゼンが希望した4選手の中に含まれていた。アルバレスはプロスペクトランキングから外れる事が確定的な状況であったので、事実上アストロズはチーム内の3位・4位・5位のプロスペクトを1回のトレードで送る事にルーノーは同意したのだ。

 

午後230分—デッドラインまで30分の所で、Dバックスはアストロズのオファーを受けてトレードを前向きに進める方針を示した。

 

ちょうどその頃ルーノーの携帯電話にオーナーのクレーンから電話がかかってきた。クレーンはルーノーにトレードの進捗を確認するために電話を掛けてきたのだ。一連の説明を聞いたクレーンは「4人目の選手の候補は誰だ?」と聞いた。

 

「ジョシュ・ロハスです。」とルーノーは答え、それに「ジョシュ・ロハスとは誰だ?」とクレーンは応じた。

 

ロハスは、ルーノーの説明に基づくと、今年AAAOPS1.000に近い成績を残している選手である。ベースボールアメリカ等の第三者機関によるプロスペクト評価ではリスト入りしていない事も多いが、球界内部でのロハスの評価はそれよりもっと高いとみて間違いなかった。実際に他球団がアストロズにトレードの問い合わせを行う場合、ほとんどのケースでロハスの名前が出た。またユーティリティ性が高く、最悪でもユーティリティプレイヤーになれる逸材だ。

 

「分かった。それで君はドラフトで下位指名の未来のユーティリティ候補のために、グレインキーのトレードを保留しているのか?」とクレーンは言った。

 

ルーノーはクレーンとの電話を切った後に、グレインキーのトレードに関する最後の調査を行なった。確かに最終的にトレードを決めるのはルーノーだが、彼は同僚との意見交換を行った。そして30歳のアダム・ブロディというアナリストの話を聞いてから、一気にロハスをトレード案に含める方向に話が進んだ。ブロディは「確かにグレインキー獲得の代償は大きい。しかしグレインキーの投球のクオリティは高いし、さらに彼を2年間保有できる。見返りに合った価値があるトレードです。」とルーノーに伝えた。

 

トレードデッドラインまで残り23分の午後237分になった。ルーノーはヘイゼンに電話を掛けたが繋がらず、メッセージを送った。メッセージの内容は、アストロズはDバックスとの取引に応じるつもりだというものであった。ルーノーはヘイゼンが他球団にグレインキーを放出した事を想定して、返事が返ってくるまで20分もあったように感じた。実際には90秒でヘイゼンはルーノーに返事を返してきたのだが。

 

了解。それがヘイゼンからのメッセージだ。

 

実際にはヘイゼンとDバックスは、アストロズ以外のチームとグレインキーについてトレードの話を持っていなかった。ヘイゼンは「残り30分の時点で、アストロズにトレードするか放出しないかの二択だった。」と後に明かしている。

 

両チームともに祝っている時間はなかった。メディカルレポート等の必要な書類を準備しなければならなかったし、トレードデッドラインが近づいていたので他のトレードもまとめなければならなかった。アストロズはアーロン・サンチェスを獲得するためにブルージェイズにデレク・フィッシャーを放出したし、Dバックスはグレインキーの穴を埋めるためにマイク・リークのトレードをマリナーズと急いでまとめた。

 

さらにもう1つの問題が残っていた。なんとその日グレインキーはニューヨークのヤンキース戦のデイゲームで投げていたのだ。雨の影響で試合は一時中断していた。その中断時間の間で、両チームのトレード案はまとまった。午後253(トレードデッドラインまで残り7)に、ルーノーはグレインキーが降板したのを確認して最後のメッセージをヘイゼンに送った。

 

グレインキーのトレードが決定した事で、両チームのGMは関係するプレーヤーに連絡をして彼らの家探しを始めた。ヘイゼンは降板したグレインキーと監督のトレイ・ロブロ呼び寄せて、彼らにトレードの決定を伝えた。

 

アストロズの監督AJ・ヒンチはクラブハウスのすべてのテレビの電源を切り、グレインキーが新たなチームメイトになったことを選手たちに伝えるために急いだ。しかし多くの選手はTwitterをスクロールして、デッドライン後のサプライズを探していた。 「グレインキーのニュースが決まったとき、誰もが興奮していた。」とバーランダーは言う。

 

その後2ヶ月間バーランダーとコールは素晴らしい投球を続けていき、ほぼ全てのカテゴリーで2人のうちどちらかがトップになった。今年のサイ・ヤング賞をどちらが受賞するかは分からないが、間違いなく2人のうちどちらかが受賞するのは決定的である。

 

またグレインキーはアストロズ移籍後の10登板で、8勝1敗防御率3.02の成績を収めた。まさに移籍後のグレインキーは、彼を獲得する前にアストロズが期待した通りの成績を残してみせた。

 

忍耐力とアストロズのスカウティング、選手育成能力のお陰で、ルーノーはGMにとって最も困難なミッションを達成したように見える。つまり彼はグレインキー獲得を通して、アストロズを短期間限定ではなく長期的に成功するチームにするというミッションを達成したのである。

 

参考:https://www.si.com/mlb/2019/10/01/houston-astros-zack-greinke-world-series

Photo BY Ian D’Andrea

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ナショナルズが球団史上初のワールドチャンピオンに輝き、2019年の野球シーズンもいよいよ終了しました。いよいよストーブリーグが始まりますが、その前に今回はプレーオフに進出した10チームに関する興味深い記事を紹介したいと思います。その記事は104日にMLB公式サイトに公開された「Here's how the 10 postseason teams were builtという記事です。

 

記事の冒頭では、今季プレーオフに進んだ10チームのメンバーの入団形式の違いが示されています。例えば10チームの中で最も生え抜き選手が多いのはドジャースで、実に地区シリーズのロースター25人のうち15人の選手が生え抜きになっています。一方そのドジャースを破ったナショナルズはFAで加入した選手が9人で最多となっています。このような入団の経緯の視点から、10チームを見ていきます。

 

①アストロズ(74.7 WAR)

生え抜き選手:9

・ドラフト:6

・海外FA:3人

FA6

トレード:9

ウェイバー:1

*ウェイバーの解説記事はこちら

 

アストロズの特徴はバランスの良さです。下の表1は今季のWARが高い選手7人とその入団経緯をまとめたものです。ドラフト、トレード、FA、海外FAがバランス良く並んでいるのが一目瞭然です。

(表1)

選手名

入団経緯

ブレグマン

ドラフト

コール

トレード

スプリンガー

ドラフト

バーランダー

トレード

ブラントリー

FA

アルバレス

トレード

アルテューベ

海外FA

 

②ヤンキース

生え抜き選手:7

・ドラフト:4

・海外FA3

FA5

トレード:13

 

2000年前後は高額なFA選手を大量に獲得していたヤンキースですが、現在はたった5人と影が薄くなっています。その代わりに1番多い入団経緯はトレードになりました。過去2年でもボイトやメイビン、アーシェラを僅かな見返りで獲得して、彼らが主力級の活躍をしています。さらに生え抜きでは、ドラフトでジャッジを海外FAでセベリーノを輩出しています。

 

③ツインズ

生え抜き選手:13

・ドラフト:7

・海外FA5

・その他FA1

FA4

トレード:6

ウェイバー:2

 

ツインズ最大の特徴は、海外FA経由で獲得した選手が10チームで最多の5人いる点です。さらに彼らが合計で生み出した14.6WAR10チーム中トップで、質の高さも折り紙付きです。また今季はFAでクルーズ、ゴンザレス、スコープを獲得して、FAで加入した選手が増えました。

 

④アスレティックス

生え抜き選手:5

・ドラフト:5

FA4

トレード:15

ルール5:1

 

アスレティックスはトレード経由で獲得した選手が15人で、これは10チーム中2位の数字です。その中でも2014年にサマージャ(SF)をホワイトソックスに放出した見返りに、セミエン・バシット・フェグリーの3人を獲得したトレードは印象的です。一方ツインズとは対照的に、海外FAで獲得した選手は1人もいませんでした。

 

⑤レイズ

生え抜き選手:6

・ドラフト:4

・海外FA2

FA2

トレード:17

 

レイズはトレード経由で獲得した選手が17人で、前述のアスレティックスを上回り10チーム中最多です。特に昨年の夏のトレードで獲得したグラスノー・メドウズ・ファムが今季重要なピースになりました。また少数派の生え抜き・FAからも、スネルやモートン、キアマイアーといったチームに不可欠な選手を獲得しています。

 

⑥ドジャース

生え抜き選手:15

・ドラフト:10

・海外FA5

FA4

トレード:6

 

ドジャースの特徴は10チーム中最多15人を輩出した生え抜き選手の多さです。ベリンジャー、カーショーらを輩出したドジャースでは、今季もスミス、ラックス、メイ、ゴンソリンらがMLBデビューを果たしています。さらにトレードで獲得したマンシー、テイラー、ターナーらをトップ選手に育てるなど、獲得の経緯に関わらず優秀な育成力が見える結果となりました。

 

⑦ブレーブス

生え抜き選手:5

・ドラフト:2

・海外FA3

FA9

トレード:10

ウェイバー:1

 

ブレーブスは、生え抜き選手が5人と少なく見えます。しかしこの5人はフリーマン、アクーニャ、アルビース、ソロカ、テヘランで、彼らを合計するとチームのWARの半分近くになり人数以上のインパクトを与えています。

 

⑧カージナルス

生え抜き選手:12

・ドラフト:10

・海外FA2

FA4

トレード:7

ウェイバー:1

ルール5:1

 

カージナルスの特徴はドラフトで獲得した選手が10人と多い点です。これはドジャースと並び、10チーム中最多の数になっています。今季ブレイクしたフラハティやハドソン、エドマンらも全員ドラフト経由の選手です。生え抜き選手に強みがある一方で、FA経由で獲得した選手は4人で3.4WARで若干物足りなさが残ります。

 

⑨ナショナルズ

生え抜き選手:8

・ドラフト:6

・海外FA2

FA9

トレード:8

 

ナショナルズもアストロズ同様バランスの良さが際立ちます。下の表2は今季のWARが高い選手7人とその入団経緯をまとめたものです。ナショナルズもドラフト、トレード、FA、海外FAがバランス良く並んでいるのが分かります。

(表2)

選手名

入団経緯

レンドン

ドラフト

シャーザー

FA

ストラスバーグ

ドラフト

ソト

海外FA

コービン

FA

ターナー

トレード

ケンドリック

FA

 

⑩ブルワーズ

生え抜き選手:7

・ドラフト:6

・海外FA1

FA8

トレード:8

ウェイバー:2

 

ブルワーズも各部門で満遍なく成功を収めています。ドラフトではヒウラ、FAではケイン、そしてトレードではイエリッチの獲得に成功しています。またドラフトでは11巡目だったウッドラフや、ジャイアンツで防御率5.68だったポメランツなどチーム加入後に成績が伸びた選手が多いのも特徴です。

 

参考:https://www.mlb.com/news/how-the-2019-postseason-teams-were-built?t=mlb-pipeline-coverage

Photo BY: Jon Dawson

 

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2019105日、ヒューストン・アストロズのゲリット・コールはタンパベイ・レイズ戦で誰もが驚くような投球をやってのけた。8回途中まで投げて、15三振、1四球とまさに圧巻のピッチングだった。今回の記事では歴史的な快投だったコールの投球を様々な記録と結びつけて見ていきたいと思う。

 

33回の空振り

これはピッチトラッキングの記録が残る2008年以降では、史上最高の記録になる。これまでの記録は2010年にティム・リンスカム(SF)がマークした31回である。さらに驚くべき点は、レギュラーシーズンの成績でもコールより多く空振りを奪った投手はダニー・ダフィー(KC)とクレイトン・カーショウ(LAD)だけという事だろう。

1試合で奪った空振りの数についてはこのリンクから見る事が出来る。

 

15三振

コールはプレーオフの試合で、15以上の三振を奪ったアストロズの選手になった。彼以前のアストロズのチーム記録は、1986年のNLCSマイク・スコットがマークした14三振である。スコットはその日がプレーオフ初登板であり、そのシリーズではMVPに輝いた。

 

③プレーオフで12以上の三振を奪った回数

昨日の好投により、コールはプレーオフで12以上の三振を複数回奪った選手の仲間入りを果たした。そのリストには、トム・シーバージム・パルマーボブ・ギブソンが含まれている。コールの同僚でもあるジャスティン・バーランダーも1回記録しているので、近いうちにこのリストに加わる可能性もある。

 

④プレーオフでの空振り三振の数

コールが奪った15の三振のうち14回は空振りによるものだった。これは2008年以降のプレーオフの試合では最多である。これまでの記録は2015NLDSでジェイコブ・デグロム(NYM)が樹立した13であった。

 

⑤プレーオフでの三振記録

プレーオフの試合で15より多くの三振を奪ったのは、1968年のボブ・ギブソンの171998年のケビン・ブラウン16だけである。つまり15三振は歴代3位になる。

 

100マイル以上で三振を奪った回数

コールは7回にチェ・ジマンから100マイルの4シームで三振を奪っている。彼がプレーオフで、100マイル以上のボールで三振を奪うのは2回目になる。これで記録が残る2008年以降ではノア・シンダーガード(NYM)に並んだ。

 

8回以降に99マイルを記録した先発投手

コールは8回に99マイル以上のボールを5球投げた。これにより、99マイル以上を8回以降も投げた9人目の投手になった(2008年以降)。ちなみにこれはレギュラーシーズンも含めての記録であるから、より希少性が際立つ。

 

⑧4シームの平均球速

コールが60球投げた4シームの平均球速は97.9マイル(157.6キロ)だった。これはキャリア通算197試合目にして3番目の速さだった。ちなみに史上最速は、76日のエンゼルス戦の98.1マイル(157.9キロ)である。

 

10試合連続二桁三振

コールはシーズン最後の9試合で二桁三振を記録して、昨日も15個の三振を奪っている。これで10試合連続二桁三振になるが、もちろん歴代1位である。過去最高は8試合連続のクリス・セール(BOS)ペドロ・マルティネスである。

 

⑩四球の数

コールは15三振を奪う一方で、四球を与えたのは1回だけ。四球を1個以下に抑えながら、奪った三振数15は歴代2位に該当する。1位は⑤の項目でも名前の出たボブ・ギブソンで17の三振を奪いながら四死球は1個に抑えた。

 

改めて様々な記録を見るとその凄さがよく分かる。今のコールならばこれらの記録のさらなる更新にも期待したいと思う。

 

参考:https://www.mlb.com/news/gerrit-cole-15-strikeouts-alds

Photo BY: Jon Dawson

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ヤンキースに所属しているアーロン・ジャッジは2016年と2017年で別人に生まれ変わりました。

2016年にデビューしたジャッジは驚異の三振率44%を記録するなど、打撃の粗さが大きな課題となっていました。
 

しかしジャッジは2017年に52HRを記録して、新人王になりMVP投票でも2位に入りました。彼が進化した背景にはいくつか理由がありました。その中でもあまり知られていないエピソードを紹介したいと思います。

 

実はジャッジの成長には代理人が同じベテラン選手の存在があったようです。それはオリオールズやレイズで活躍したルーク・スコットです。

 

まずはルーク・スコットのキャリアを振り返ってみましょう。1978年生まれの現在39歳で、2005年にアストロズでMLBデビューを飾りました。2008年にオリオールズに移籍後は、3年連続で20HR以上を記録しています。2013年を最後にMLBの舞台から遠ざかっており、現在はFAです。

 

スコットとジャッジは、ジャッジが2013年にドラフトで指名された時に初めて会ったそうですが、しばらくは特に連絡を取っていなかったそうです。しかし2016年のシーズン後に、スコットがMLBで苦戦したジャッジに連絡を入れたことがジャッジを大きく助けることになりました。

 

スコットのメッセージは「俺は打撃のエッセンスを持っている。これは君の人生を変えるはずで、君とシェアしたい。だから少し時間を取ってほしい。」でした。

 

ジャッジはスコットを個人的に師と仰いでいて、2人は現在も非常に良好な関係を築いています。「彼は興味深い男だね。彼にあのビデオを見せてもらうまでは、打撃に関して知らないことがあったから。」とジャッジは語っています。

 

ジャッジがバリー・ボンズやミゲル・カブレラの打撃について勉強したことは知られていましたが、その裏にはスコットの存在があったのです。

スコットは自身の打席でのメカニクスを分析している時にトップ選手には共通することがあることに気づいたそうです。

 

それは、彼らの打席での身体の動かし方とそしてバットに当てるまでにエネルギーを浪費しないということです。スコット曰くエリート選手はみんなこれをやっていて、それが一貫できているそうです。

 

スコットはそれをジャッジとシェアしたいと思い、彼にメッセージを送りました。その後彼はジャッジに、このエリート選手たちの打席での動きを共有して、どのように使うかを説いたそうです。

 

その後のジャッジの成功は言わずもがなです。2017年はア・リーグ1位のHR52を記録して、OPSはエンゼルスのマイク・トラウトに次いで2位四球と三振はリーグ首位でした。この活躍にはもちろんスコットも喜んでいます。

 

スコットは、ジャッジの活躍を牢獄から宮殿に引っ越したと面白い例えで彼の活躍を称えています。NYは野球のメッカであり、責め立てられることも多い。しかし彼はとても謙虚な男だから、これからも上手くいくはずだとスコットはジャッジにエールを送っています。

 

ジャッジはメークアップが優れていると評判ですが、彼の謙虚な姿勢があったからこそスコットも打撃のエッセンスを共有しようと思ったのでしょう。ジャッジの謙虚な性格はかつてのヤンキースのスターデレク・ジーターを思い起こさせるところがあります。彼ならば、厳しいニューヨーカーからも愛される選手として長く活躍できるはずです。

 

参考:https://www.newsday.com/sports/columnists/david-lennon/luke-scott-part-of-secret-of-aaron-judge-s-success-1.17307550

Photo BY: KA Sports Photos

 

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MLBもプレーオフの季節になりました。毎年プレーオフで勝ち抜くために最も大切な要素は何かという話は議論されています。強力なブルペンなどは特に重要とされますが、今回は“プレーオフこそHRの重要性が高まるという話を紹介したいと思います。

 

今季はツインズが両リーグ最高の307HRを記録するなど、HRが激増しました。また2001年以降の19年間でチームHR数の上位10チームのうち、実に半数以上の6チームが2019年のチームです(ツインズ・ヤンキース・アストロズ・ドジャース・アスレティックス・カブス)

 

さらにオールスターゲームの前にアストロズのジャスティン・バーランダーが激しく批判していたように、MLB機構がいわゆる“飛ぶボール”を使っているのではないかとの声も多く聞かれます。

 

プレーオフなどの短期決戦では、バントや盗塁といった小技を駆使して成功したチームもあります。しかしこのように多くのチームがHR数を伸ばしていて、さらにボールがよく飛ぶと考えられている状況で勝つために大事なものは何でしょうか?それはズバリHRを打つ事です。

 

実際にアストロズでサイ・ヤング賞を最後まで争ったバーランダーとゲリット・コールのコンビは、2人合わせて1試合で2.25本しかシングルヒットを打たれていません。スモールベースボールを展開するためには、まず塁に出る必要があります。しかし上記の数字より今季の彼ら相手にはそれはとても難しいと言えます。

 

(1)

Team

1試合のシングルヒット

PO期間の合計バント数

SF(2014)

7.2

9

KC(2015)

6.3

4

CHC(2016)

4.9

1

HOU(2017)

4.6

1

BOS(2018)

5.6

2

 

1を見ても分かりますが、2014年にワールドシリーズを制覇したジャイアンツを最後に、シングルヒットやバントの数は減少傾向にあります。

 

(2)

シーズン

勝率

2003-06

.356

2007-10

.341

2011-14

.387

2015-18

.333

 

 

2に記される勝率は、プレーオフの試合でHRが出なかったチームの勝率です。HRが出ないと勝率が3割台にまで低迷しており、一気に低下する事は明らかだと言えます。

 

さらに、2015年から18年までの4年間の間でHRの数が0本あるいは1本のチームの勝率は.396でした。一方で2HR以上を記録したチームの勝率は.697になり、プレーオフで勝ち抜けるためには複数のHRを打つ事がいかに大事かがよく分かります。

 

今回の記事ではHRがプレーオフではより重要性が高まるという事を伝えたい訳ですが、シングルヒットやバントが無駄であるとは言っていません。HRをとにかく狙う野球とスモールベースボールのどちらかが絶対に優れていると言いたい訳ではないのです。

 

例えば昨年のレッドソックスとドジャースが対戦したワールドシリーズ第1戦の初回に、ムッキー・ベッツはシングルヒットを打ち塁に出ました。その後彼は盗塁を決めて、次の打者アンドリュー・ベニンテンディのタイムリーでホームに帰ってきました。

 

このようにシングルヒットや盗塁を駆使して得点を取る事も時には求められます。しかし複数のHRが出るとチームの勝率が高まるのは事実ですから、今年のプレーオフでは例年以上にHRに注目して観戦するのも面白いかもしれません。

 

参考:https://www.si.com/mlb/2019/09/23/new-york-yankees-la-dodgers-home-run-record

Photo BY: Ian D’Andrea

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