ナショナルズが球団史上初のワールドチャンピオンに輝き、2019年の野球シーズンもいよいよ終了しました。いよいよストーブリーグが始まりますが、その前に今回はプレーオフに進出した10チームに関する興味深い記事を紹介したいと思います。その記事は10月4日にMLB公式サイトに公開された「Here's how the 10 postseason teams were built」という記事です。
記事の冒頭では、今季プレーオフに進んだ10チームのメンバーの入団形式の違いが示されています。例えば10チームの中で最も生え抜き選手が多いのはドジャースで、実に地区シリーズのロースター25人のうち15人の選手が生え抜きになっています。一方そのドジャースを破ったナショナルズはFAで加入した選手が9人で最多となっています。このような入団の経緯の視点から、10チームを見ていきます。
①アストロズ(74.7 WAR)
生え抜き選手:9人
・ドラフト:6人
・海外FA:3人
FA:6人
トレード:9人
ウェイバー:1人
*ウェイバーの解説記事はこちら。
アストロズの特徴はバランスの良さです。下の表1は今季のWARが高い選手7人とその入団経緯をまとめたものです。ドラフト、トレード、FA、海外FAがバランス良く並んでいるのが一目瞭然です。
(表1)
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②ヤンキース
生え抜き選手:7人
・ドラフト:4人
・海外FA:3人
FA:5人
トレード:13人
2000年前後は高額なFA選手を大量に獲得していたヤンキースですが、現在はたった5人と影が薄くなっています。その代わりに1番多い入団経緯はトレードになりました。過去2年でもボイトやメイビン、アーシェラを僅かな見返りで獲得して、彼らが主力級の活躍をしています。さらに生え抜きでは、ドラフトでジャッジを海外FAでセベリーノを輩出しています。
③ツインズ
生え抜き選手:13人
・ドラフト:7人
・海外FA:5人
・その他FA:1人
FA:4人
トレード:6人
ウェイバー:2人
ツインズ最大の特徴は、海外FA経由で獲得した選手が10チームで最多の5人いる点です。さらに彼らが合計で生み出した14.6WARも10チーム中トップで、質の高さも折り紙付きです。また今季はFAでクルーズ、ゴンザレス、スコープを獲得して、FAで加入した選手が増えました。
④アスレティックス
生え抜き選手:5人
・ドラフト:5人
FA:4人
トレード:15人
ルール5:1人
アスレティックスはトレード経由で獲得した選手が15人で、これは10チーム中2位の数字です。その中でも2014年にサマージャ(現SF)をホワイトソックスに放出した見返りに、セミエン・バシット・フェグリーの3人を獲得したトレードは印象的です。一方ツインズとは対照的に、海外FAで獲得した選手は1人もいませんでした。
⑤レイズ
生え抜き選手:6人
・ドラフト:4人
・海外FA:2人
FA:2人
トレード:17人
レイズはトレード経由で獲得した選手が17人で、前述のアスレティックスを上回り10チーム中最多です。特に昨年の夏のトレードで獲得したグラスノー・メドウズ・ファムが今季重要なピースになりました。また少数派の生え抜き・FAからも、スネルやモートン、キアマイアーといったチームに不可欠な選手を獲得しています。
⑥ドジャース
生え抜き選手:15人
・ドラフト:10人
・海外FA:5人
FA:4人
トレード:6人
ドジャースの特徴は10チーム中最多15人を輩出した生え抜き選手の多さです。ベリンジャー、カーショーらを輩出したドジャースでは、今季もスミス、ラックス、メイ、ゴンソリンらがMLBデビューを果たしています。さらにトレードで獲得したマンシー、テイラー、ターナーらをトップ選手に育てるなど、獲得の経緯に関わらず優秀な育成力が見える結果となりました。
⑦ブレーブス
生え抜き選手:5人
・ドラフト:2人
・海外FA:3人
FA:9人
トレード:10人
ウェイバー:1人
ブレーブスは、生え抜き選手が5人と少なく見えます。しかしこの5人はフリーマン、アクーニャ、アルビース、ソロカ、テヘランで、彼らを合計するとチームのWARの半分近くになり人数以上のインパクトを与えています。
⑧カージナルス
生え抜き選手:12人
・ドラフト:10人
・海外FA:2人
FA:4人
トレード:7人
ウェイバー:1人
ルール5:1人
カージナルスの特徴はドラフトで獲得した選手が10人と多い点です。これはドジャースと並び、10チーム中最多の数になっています。今季ブレイクしたフラハティやハドソン、エドマンらも全員ドラフト経由の選手です。生え抜き選手に強みがある一方で、FA経由で獲得した選手は4人で3.4のWARで若干物足りなさが残ります。
⑨ナショナルズ
生え抜き選手:8人
・ドラフト:6人
・海外FA:2人
FA:9人
トレード:8人
ナショナルズもアストロズ同様バランスの良さが際立ちます。下の表2は今季のWARが高い選手7人とその入団経緯をまとめたものです。ナショナルズもドラフト、トレード、FA、海外FAがバランス良く並んでいるのが分かります。
(表2)
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⑩ブルワーズ
生え抜き選手:7人
・ドラフト:6人
・海外FA:1人
FA:8人
トレード:8人
ウェイバー:2人
ブルワーズも各部門で満遍なく成功を収めています。ドラフトではヒウラ、FAではケイン、そしてトレードではイエリッチの獲得に成功しています。またドラフトでは11巡目だったウッドラフや、ジャイアンツで防御率5.68だったポメランツなどチーム加入後に成績が伸びた選手が多いのも特徴です。
参考:https://www.mlb.com/news/how-the-2019-postseason-teams-were-built?t=mlb-pipeline-coverage
Photo BY: Jon Dawson