昨日はマリナーズの時代と逆行する選手の集め方を紹介しました。今日はチームではなく、1選手として時代の流行りとは逆のアプローチを取り入れている選手を紹介します。その選手はレッズのスコット・シェブラーです。
今回参考にさせていただいた記事は
是非元の記事にも目を通していただきたいです。
シェブラーが今年行なっている打撃のアプローチとはズバリ”打球角度を下げる”ことです。最近のMLBでは、フライボールレボリューションと呼ばれる打撃アプローチが話題です。これは打球の角度を上昇させて、HRを積極的に狙っていくというものです。これには欠点もあり三振が増加することです。
まずは今季と昨年のシェブラーの主要なスタッツを並べてみます。
2017年.233/.307/.484/.791 K%23.5% wRC+100 打球角度11.3
2018年.282/.351/.471/.822 K%18.0% wRC+124 打球角度6.3
このスタッツの変化は一目瞭然かと思います。打球角度を下げるように変更したことで、打率が上昇してK%が減少しています。しかし今回最も注目に値するのは、wRC+が100から124へ大幅に向上しているところです。
wRC+はその打者が生み出す得点能力を数値化したものであり、平均的な打者は100となっています。これは現在打者を評価する時によく使われる指標で、MVP投票を行う記者でも用いている人がいます。
昨年のシェブラーはwRC+がピッタリ100となっています。これはつまりHRを30本打っていながら、彼は平均的な打者だったという事になります。しかし今年はHRを減らしているのにも関わらず、wRC+124と大幅に成績を改善させています。
現在170打席以上の打者はMLB全体で210人います。その中でシェブラーのwRC+124は62位となっています。
昨年規定打席に到達した打者144人中wRC+ランキングでは94位だったことを考えると、今季のシェブラーが昨年より打撃好調だと断言してもいいはずです。
HRのペースが落ちていることを考慮すると、一見攻撃力も低下しているのかと思いきやその真逆というわけです。
もう少し掘り下げた数字も記事では紹介されています。
2017年GB46.2%FB24.4%LD19.8%打球速度88.8
2018年GB54.0%FB16.1%LD24.8%打球速度91.0
これらの数字を見ても明らかなように、シェブラーはフライを打つよりもラインドライブを打つことをこころがけています。そしてその結果打球速度も上昇しています。
記事ではどうしてこの時代と逆行したアプローチで、シェブラーの打撃成績が上がっているのかを少し極端な事例を用いながら解説しています。
シェブラーは6月7日と8日の2日間で12打数7安打3つのツーベースを記録しています。この2試合のシェブラーの打率/出塁率/長打率は.583/.583/.833となります。
記事ではシェブラーがHRではなく、2Bを3本打った事に注目しています。もし去年までのようにHR狙いの打撃をしていたらと仮定して特殊な設定をしています。
7本のヒットのうち
単打1本<HR1本に変える。
2B✖3本<凡退に変更(HR狙いのアプローチの犠牲としてです。)
この結果生み出される打率/出塁率/長打率は.333/.333/.833となり、OPSはこちらの方が高くなるのです。
今回の仮定は非常に特殊な事例だと思います。しかしHR数自体は減少しているのに、攻撃力は上がっているわけですからこの理論にもある程度の妥当性はあると思います。これがシェブラーが、HRが減っているのに総合的な攻撃力が高まっている理由でした。
*感想
今回の元の英語の記事を読んだ時はハッとさせられました。あの選手も打球角度をあげて成績が向上しているというニュースは多くありますが、その逆というのは非常に珍しいからです。最後の仮定を用いた話は、机上の空論で終わりそうな話ですが、実際にシェブラーは結果を出しています。この考え方が広く認知されると、フライボール革命に対しての理解も変わるのでは?と思いました。MLBファンだけでなく、実際に野球をプレイする人たちにも原文記事を読んで欲しいと思います。
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