非常に長い期間ブログの更新を放置しておりました。その間にプレーオフも終わりまして、いつの間にかオフシーズンに突入しています。
この時期によくある話ですが、大量の移籍関連の噂が飛び交っています。信憑性の怪しいものも多くありますが、個人的にはインディアンスのエースであるコリー・クルーバーの噂が気になります。
クルーバーは2014年と2017年にサイ・ヤング賞を受賞しており、今季も最終候補の3人に残っています。32歳という年齢とここ2年間のプレーオフで打ち込まれている点は減点ポイントですが、現在のMLBを代表する投手の1人という評価に異を唱える方はほとんどいないでしょう。
またもう1つのクルーバーの魅力が5年3850万ドルと格安の契約を結んでいる事です。来季のサラリーは僅か1520万ドルで2020年と2021年はチームオプションとなっています。
これだけの実力を備えていて給料も格安のエースをインディアンスが放出するか検討しているとは驚きですが、今回のブログではなぜインディアンスがクルーバーの放出を検討しているのかを考えていきたいと思います。
結論から言うと、インディアンスは再建ではなくロスターの再編を目指していると言えます。
今季のインディアンスは、夏場までに地区の他4チームが再建モードに入った“緩い”ア・リーグ中地区でも圧勝する事はできず、ア・リーグのプレーオフ進出チームでは最小の91勝に終わりました。
そしてプレーオフでもアストロズ相手にスウィープを喫してあえなく敗退しました。このオフには、アンドリュー・ミラーやマイケル・ブラントリーら複数の主力がFAとなります。
来季も同地区の他球団の戦力がそれほど充実していないので、地区優勝自体は難しくないと思いますが、プレーオフを含めて勝ち抜けるかと言われると疑問が残ります。
プレーオフではアストロズに敗れましたが、1番の差は選手層だと思います。アストロズは昨年のWS制覇にも貢献したブラッド・ピーコックやクリス・デベンスキすらPOのメンバーから外れた一方で、インディアンスは不振のミラーやコディ・アレンへの依存度は変わらずでした。
打線も、シーズン中のHR数やチーム合計fWARはインディアンスが優っていましたが、リンドーアやホセ・ラミレスへの依存度が高かったインディアンスに対して比較的バランスの良かったアストロズ打線がPOでは圧倒しました。
少し冗長になりましたが、要約するとインディアンスの弱点は“主力メンバーと控え組の差が大きい”の一言で表現できます。
そこでア・リーグでPOに進んだ4チームとインディアンスの、チーム内fWAR上位15名を各順位ごとに比較してグラフにまとめました。
①インディアンス対レッドソックス
今季両リーグ唯一の10.0超えを記録したベッツは例外ですが、2位から7位までの選手のWARはインディアンスの方が優れています。ところが、11位以下の5人はレッドソックスの方が優れています。インディアンスでは上位15選手のうち1.0を割った選手が3人いましたが、レッドソックスでは1人もいませんでした。
②インディアンス対ヤンキース
ヤンキースとインディアンスの比較は、先程のレッドソックスの比較よりも、両チームのロスターの特徴を浮き彫りにします。
ヤンキースは今回集計した5チームの中で唯一fWAR6.0以上を記録した選手がいませんでした。しかしチーム内15位のソニー・グレイの1.7は他球団の15位の選手と比較すると最高の数字です。
つまり2018年のヤンキースは、MVP級のスーパースターは不在だがロスターのメンバーの質が総じて高かったと言えます。
対照的に、インディアンスはチーム内のfWARが高い8人はヤンキースの上位8人より上ですが、残り7人はヤンキースの7人より低い数値となっています。
つまり2018年のインディアンスは、MVP級のスーパースター(ラミレスやリンドーア)はいたが、控え組の質は低かったと言えます。
同じような特徴が、アストロズやアスレチックスと比較しても理解できると思います。グラフを見ると、チーム内WAR上位の選手のWARはインディアンスが上回るが、下位に行けば行くほどアストロズやアスレチックスの方が上回るという違いが明確になります。
③インディアンス対アストロズ
インディアンスは上位10選手のうち3位以外で、アストロズより上です。
しかし11位を境にそれ以降の順位はアストロズが上回っています。
④インディアンス対アスレチックス
アスレチックスとの比較でも、上位10選手はインディアンスの方がWARで上回ります。しかし11位以降になると一気にアスレチックスの選手が逆転しています。
試しに、アストロズとアスレチックスも比べました.
こちらは、
アストロズ:1位、2位、3位、14位、15位
アスレチックス:5位から13位
引き分け:4位
とロスターの選手の質は認められません。
結論になりますがロスターの選手の質に偏りがあると、監督は質の高い主力を簡単に休ませたがらなくなります。インディアンスでも主力のリンドーアは158試合、ラミレスは157試合に出場しています。投手陣でもクルーバーの投球回はリーグ1位でした。
ベンチの選手が主力と実力の面で開きがあるせいで、シーズン中に主力は疲労を溜め込み、POに突入する。そしてPOでは疲労がある状態で、ベストのパフォーマンスを出せない。この悪循環がインディアンスが今年POで余りにもあっさり負けた1番の理由でしょう。
主力選手の疲労を表している数字をいくつか示したいと思います。
①エースのクルーバーのシンカーの平均球速
3月29日から8月31日:92.1マイル
9月1日から10月31日:91.3マイル
②リンドーアとラミレスのwRC+
3月29日から8月31日:リンドーア135、ラミレス160
9月1日から10月31日:リンドーア107、ラミレス75
これらの数字を見れば分かりますが、インディアンスの投打の主力は9月以降にパフォーマンスを落としました。
そう考えれば、クルーバーを放出して”質”を若干落としてでもロスター編成の偏りを減らそうとする動きが報じられている事についても理解が出来ると思います。