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新型コロナウイルス感染症の感染拡大は社会に大きな影響を与えていますが、それは野球界にとっても同じです。シーズンが開催されるかどうかも不明という前代未聞の1年で、先週行われたドラフト会議は史上最小の規模で行われました。

 

選手の指名は5巡目までで、プロ入りへの切符を掴んだのは160人に限定されました。ただしその160人の指名から漏れた選手の中で、最大2万ドルの範囲内でなら契約を認めるという特別ルールも今年は設定されています。その特別ルールの中で、多くの優秀な選手を獲得しているのがロイヤルズです。今回はアマチュア選手の多くがロイヤルズとの契約を希望する理由を紹介したいと思います。

 

アメリカの東海岸で日曜日の午前9時から特別ルール下での契約交渉が始まりました。その後開始から24時間以内にベースボール・アメリカ(以下BA)誌が選ぶ500人のドラフト候補のうち未指名の340人の中から12人が契約に合意しました。実にその12人のうち5人がロイヤルズとの契約に合意したのです。ロイヤルズ以外のチームで複数人の選手と契約に合意したチームはありません。

 

「非常に価値の高い(一部のエリート)選手だけでなく、指名順位が低い選手も大切にするチームに行きたい」と日曜日にロイヤルズと契約した上記BAのランキングで174位のキャッチャー、Kale Emshoffは言います。 「チームに所属してから、大切に扱ってもらえるかを知りたいし、それは契約するチームを決める際に重要な要因になります。」

 

このEmshoffのように初日にロイヤルズと契約した選手達がロイヤルズを選んだ動機は単純明快でした。選手達は、自身をサポートしてくれるチームとの契約を望んでいたのです。

 

その背景にはここ数ヶ月間不安定な状態に晒されたマイナーリーガーの存在があります。5月末に数百人のマイナーリーガーの解雇が話題になりました。彼らは解雇されただけでなく、次の所属先もなくさらに野球以外のアルバイト等も見つけるのが困難な状況が続いています。現在はチームと契約している選手も今後の契約に関しては先行きが不透明な状況が続きます。

 

その中で選手達に対して夏までの給料を継続して支払うと明言したチームがいくつかありました。その1つがロイヤルズです。ロイヤルズは5月に、シーズン終了までの期間を通して選手を解雇しない&給料の支払いを継続することを約束したのです。

 

それを発表した声明文の中でロイヤルズのデイトン・ムーアGMは「名もなきマイナーリーガーも1015年プレーしているベテラン選手と同じくらい野球の成長に貢献しているのだ」と語っています。もちろんこれだけが選手達のチーム選びの決め手になったわけではありませんが、影響を与えたのは確かでしょう。

 

先ほどのEmshoffの話に戻りましょう。彼は交渉開始から1日の間で実に25のチームからオファーを受けました。全てのチームが契約金の最大額である2万ドルを提示し、様々な形で売り込みを行いました。

 

その中でロイヤルズはスカウトのマット・プライスがメッセージを送りました。それは控えめなものでしたが、記憶に残るものでした。その後Emshoffは午後6時にロイヤルズを選びました。

 

ロイヤルズは交渉の過程で、組織の哲学の基礎である価値観について熱心に説明しました。つまり勝てるチームである事をアピールするのではなく、成長できるチームである事をアピールしたのです。またBAのランキングで440位の投手であるChase Wallaceもロイヤルズについて「彼らはチーム組織を売りにしている。」と言います。

 

Wallaceも日曜日に11チームからオファーを受けました。その中で彼がロイヤルズを選んだ理由はEmshoffと同じです。「マイナーリーグの発展と彼らがマイナーリーグをどのように扱ってきたのかを注視しました。」とWallaceはコメントしています。またルイジアナ州立大学のSaul Garzaも彼ら2人と同じ理由でロイヤルズを選びました。

 

ロイヤルズといえば、1970年代初頭にフロリダで有給の野球アカデミーを設立した事でも知られています(のちに採算の問題から撤退)。そのようなマイナーリーガーを大切にする伝統が続きそれが目に見える形で結果が出たのが今回の成果に繋がったのではないでしょうか。

 

参考:How the Royals Hijacked the Undrafted Free Agent Market

Photo BYShea Huening