MLBの読み物

MLB(メジャーリーグ)の少しマニアックな情報を発信するサイトです。

カテゴリ:MLB用語集 > Transactions(移籍関連の用語集)

14783197432_355d48b454_z

MLB
関連の用語(特に移籍関連)の詳細な解説を作成してきました。一区切りとしてまとめのページを作成しました。このページに今まで作成した用語とそのリンクを貼っておきますので、それぞれのページにアクセスしてみてください。

 

10-and-5 Rightsの記事はこちら

25人ロースターの記事はこちら

40人ロースターの記事はこちら

DFA(Designate for Assignment)の記事はこちら

・アウトライト(アウトライト・ウェイバー)の記事はこちら

・リリース(リリース・ウェイバー)の記事はこちら

・サービスタイムの記事はこちら

FA(フリーエージェント)の記事はこちら

・年俸調停の記事はこちら

 

以上で特に難解な用語については理解できるかなと考えています。この用語についてもページを作成して欲しい等依頼がありましたらTwitterDMからご連絡ください。

 

 

Photo BY

Keith Allison

44267057852_07776c3807_z
このページでは、MLBを理解する上で不可欠な用語の1つサービスタイムを紹介します。

 

MLB公式サイトの解説を中心に見ていきたいと思います。

 

①サービスタイムとは

選手はMLB30球団の25人ロースターに登録されているまたはMLB30球団の故障者リストに登録されている日は1日ずつサービスタイムを受け取ります。イメージとしては、ゲームのログインボーナスが分かりやすいと思います。ちなみにサービスタイムの取得に関しては試合の出場の有無に左右されませんから、休養日であろうと先発投手で自分が投げない場合でもチームの25人ロースターもしくは故障者リストに入ってさえいれば自動的に貯まって行きます。

 

2019年ですと開幕から閉幕までMLBで過ごすと186日分のサービスタイムを取得できました。現在の2021年までのMLB選手会と機構側の協定では薬物摂取で出場停止を受けた場合最終的に出場停止試合数が20以上減らない限り出場停止期間はサービスタイムを得ることが出来ません。
 

 

FAになるためには

サービスタイムは172日分を蓄積すると1年分にカウントされます。これが6年分蓄積すると選手はそのシーズンの終了時にFAになる権利を得ます(翌年以降の契約を所属球団と結んでいる場合は除きます)。逆から考えると25人ロースターあるいは故障者リストに172日いても180日いても186日いてもサービスタイムとしては1年分となります。

 

③年俸調停権を得るためには

サービスタイムが3年分蓄積すると選手はそのシーズンの終了時に年俸調停権を得ます。またシーズンをサービスタイムの蓄積が2年以上3年以下で終えた選手でかつそのシーズンに86試合以上のサービスタイムを蓄積した選手を対象とする年俸調停権を得ます。対象者上位22%(基準はサービスタイム)に入った選手はサービスタイムの蓄積が3年に到達していなくても年俸調停権を得ることが出来ます。これは通称“スーパー2”と呼ばれる仕組みです。

 

④その他

サービスタイムは以上の事以外でも重要になります。例えば以前紹介した10-and-5 rightsはサービスタイムを10年以上持っていることが適用条件の1つになっています。

 
⑤サービスタイムの操作とは??
サービスタイムに関しては毎年のようにシーズン初めに論争が起きます。その論争は球団側のサービスタイムの操作の是非に関するものです。ここではサービスタイムの操作
について説明したいと思います。

上記のようにサービスタイムが6年分貯まると選手はFA権を取得します。競争が激しいMLBでは当然ながら全ての選手がFA権を取得するまでサービスタイムを貯められる訳ではありません。

しかしMLBに昇格する以前から高い評価を受けて昇格後も順調にキャリアを積んでいく選手の場合は、基本的に一旦MLBに昇格すると毎日サービスタイムが貯まっていき成績が良いのでマイナーに降格することもありません。したがってサービスタイム1年分に相当する1年172日のサービスタイムを6年分つまり172×6=1032日貯めて晴れてFAになります。


ここから論争の具体的な内容について書きますが、分かりやすくするために開幕戦でMLBデビューを果たす有望選手を想定してみます。彼はマイナー時代から評判でデビュー後も瞬く間にレギュラーを獲得し大活躍しました。彼はチームの主軸となり降格させる理由など当然ありませんから、このまま行けば6年目のシーズンを終えた後にFAとなり他球団との契約も可能となります。

しかし球団はある方法を使えばこのスター選手を6年ではなく7年チームに留めておくことが可能となります。それは1年目の開幕から約15日の間ではデビューさせないというものです。その代わりに彼を開幕時からしばらくはマイナーに降格させて15日程度経ったタイミングで昇格させるのです。

 

いきなり15日程度という具体的な数値が出てきて困惑されたかもしれませんが、開幕からMLBで起用した場合と15日程度経ってからMLBで起用した場合のサービスタイムの合計を比べればその数字の意味が分かるかと思います。

 

パターン1:開幕からMLBで起用してその後降格がない場合のサービスタイムの合計

 

172(1年目)+172+172+172+172+172=1032

となり選手はFA権を取得します。

パターン2:開幕から15日程度経ってからMLBで起用してその後降格がない場合のサービスタイムの合計


171(1
年目)+172+172+172+172+172=1031

となりFA権取得に必要なサービスタイムが1日足りないこととなり、選手は6年目終了時にFA権を取得できません。

つまりMLBデビュー後6年間のサービスタイムの合計を1031以下にすれば球団は選手の保有権をもう1年伸ばすことが出来るのです。そしてデビュー後チームの主力となるような選手が降格することはMLBではほとんどありませんから、2年目以降のサービスタイムは毎年最大値である172となるのが既定路線です。

そうなると1年目のサービスタイムを1031-172×5=171日以下に抑える必要が出てきます。1年間MLB25人ロースターor故障者リストに在籍した場合は186日のサービスタイム(厳密には172日以上のサービスタイムは全て172日とされる)を獲得できます。

 

したがってチームが選手の1年目のサービスタイムを171以下に抑えるためには、186-171=15日間MLB25人ロースターor故障者リスト以外(つまりマイナー)に選手を登録すれば良いのです。

 

非常に長い説明になりましたが、以上のような理屈で球団は選手のサービスタイムを操作しています。こんな露骨なサービスタイムの操作が本当にあるのか?と思われる方もいるかもしれません。

 

しかし現在カブスに所属するK・ブライアントは2015年のスプリング・トレーニングでOPS1.652と猛打を振るいマイナーに送る必要はないように見えましたが、チームは彼を3Aに送りました。その後417日にMLBデビューを飾ります。この露骨なサービスタイムの操作に対してはブライアントの代理人であるS・ボラスが猛抗議をしたという事もありました。

 

その後もV・ゲレーロJr.(TOR)R・アクーニャJr.(ATL)に対してもチーム側は同様の対応をしており毎年のようにこのサービスタイムの操作が行われているのが現状です。

 

今回はMLB用語の中で最も重要な1つであるサービスタイムについて解説しました。

参考リンク

What is a Service Time?


Photo BY
Minda Haas Kuhlmann 

 

14799672402_cc47377bdc_z
このページでは、MLBを理解する上で不可欠な用語の1つ
年俸調停を紹介します。

 

MLB公式サイトの解説を中心に見ていきたいと思います。

 

①年俸調停の対象者

MLBでのサービスタイムを3年以上6年未満保有している選手はそのシーズンのオフに球団との年俸交渉で調停権を得ます。特例で3年未満のサービスタイムを持つ選手も年俸調停の権利を得られます。

 

②年俸調停の仕組み

球団と選手がそれぞれの希望額を提示して交渉を行う

(期限は1月中旬)

交渉がまとまらない場合両者が希望額をお互いに提示

公聴会で第三者によって年俸額が決定される

(どちらかの提示金額が採用されるので妥協額等は提示されない)


 

参考リンク

Salary Arbitration(年俸調停)


Photo BY
Keith Allison 

 

 

 

 

7477139514_79ba99d7e8_z

このページでは、MLBを理解する上で不可欠な用語の1つ
FAを紹介します。

 

MLB公式サイトの解説を中心に見ていきたいと思います。

 

FAとは

FAは略語であり正式名称はフリーエージェントと呼ばれています(日本でもお馴染みですね)FAになると選手は全球団との契約交渉を自由に行えます。

 

FAになる方法2パターン

FAになる方法は2つあります。それぞれを見ていきます。

(1)サービスタイムが6年越えた場合

このパターンはサービスタイムのページで詳しく扱ったので参照ください。

 

(2)サービスタイムは6年に到達していないが、チームからリリースされた場合

チームからリリースされるというのは言い換えると、そのチームの組織全体から放り出される様子です。リリースについても別ページで扱っていますので参照ください。

こちらの場合気をつけないといけないことがあります。それはリリースされた選手が他球団と契約した場合も選手はサービスタイムを6年以上分貯めるかリリースされないとFAになれない点です。こちらについては字面では難しいので下に実例を示します。

 

③実例

トニー・シップ(アストロズ)20145月にパドレスからリリースされます。彼はその時点でサービスタイムを4年以上5年分保有していました。リリース直後にシップはアストロズと契約。シーズン終了までアストロズでプレイしました。しかし彼のシーズン終了時点でサービスタイムは合計で6年に到達していませんでした。この状態では上記(2)のケースが適用されて彼はFAにならずに翌年もアストロズが彼の保有権を得ます。

 

参考リンク

What is a Free Agency?

 

Photo BY

Keith Allison

 

14604375473_64083d8834_z

このページでは、MLBを理解する上で不可欠な用語の1つ
リリース(リリース・ウェーバー)を紹介します。

 

MLB公式サイトの解説を中心に見ていきたいと思います。

 

①リリースとその手続き

リリースはリリース・ウェーバーを経て完了します。リリース・ウェーバーで他球団がその選手を獲得したいと申し出れば選手は指名球団に移籍します。リリースが完了すれば選手はFAになります。またその選手が所持していた契約額でまだ契約期間が残っている場合の給料はリリースしたチームが全額負担します。

 

②リリースとDFAの違いは?

MLBの細かい用語の中でも特に違いが分かりにくいのがこの2つの単語ではないでしょうか?

 

チームがDFAを行う背景には、枠の関係である選手を40人枠から外す必要があるが、伸びしろやチームの戦力の層を考えるとチームに残って欲しいという思惑があります。

 

一方でチームがリリースを行う場合には、その選手をチームから完全に放出したいという思惑があります。選手は1人でも多くいた方が良い感じがします。以下では何故チームがリリースを行うのかについてその理由を説明します。

 

③なぜチームは選手をリリースするのか?

チームが選手を40人枠から外す時にはまずアウトライト・ウェイバーにかけます。そこで他球団から指名がなければその選手が降格を拒否しない限りチームはその選手をマイナーに降格させる事が出来ます。

 

以上の流れを頭に入れると、チームが選手を組織全体から放出するリリースを選択するのは不思議な感じがします。何故なら選手をマイナーに降格させて復調したりMLBで故障者が出れば、その選手をマイナーから昇格させる事が出来るからです。

 

リリースの対象になる選手の典型的なイメージは大型契約を結んだが不良債権化したベテラン選手です。

 

マイナーリーグのチームのロースターにもMLBの場合と同様に人数制限があります。若手主体のマイナーリーグのチーム構成で、MLB経験豊富なベテランに復調の機会を与えるためにポジションを与えるよりも伸び盛りの若手に出場機会を与える方がチームの将来を考えると大きなメリットを生むとも考えられます。

 

確かに億単位の契約を抱える選手を年俸負担でリリースするのは勇気のいる決断ですが、復調の兆しの見えないベテランに枠を与えるよりも若手にチャンスを与えようという考えがその背景にあると言えます。

 

 参考リンク

What is a Release Waivers?
 

Photo BY
guano 

このページのトップヘ